郷路弁護士通信
2013年7月31日

魚谷次長、2次訴訟判決は、統一協会の過去・現在・未来にかかわっています

1 魚谷次長は、第2陣2次訴訟の判決について要旨「いまから20年〜30年前の出来事に対する判決が最近出たに過ぎない」と言っています。しかし、それは事実ではありません。2次訴訟の原告のうち、一番最近に勧誘を受けた方は2004年2月4日です。判決から9年前に勧誘され、入信された方もいるのです。ですから、9年前の出来事に対する判決でもあるのです。なぜ、そんなに長い期間のことが同じ判決で扱われているかというと、統一協会の正体を隠した勧誘が、その間、変わらなかったからです。
 2001年6月29日、青春を返せ第1陣訴訟で札幌地方裁判所は、正体を隠した勧誘は違法だとして統一協会に不法行為責任を認めました。その判決は2003年10月10日に最高裁判所で統一協会の上告が棄却されて確定しています。にもかかわらず、統一協会は正体を隠した勧誘について、2009年3月25日付の徳野会長による法令遵守の指導(以下、「徳野指導」といいます。)まで何の変更もしなかったのです。徳野指導によっても何も変わっていないことは後記のとおりなのですが、その点は別にしても、コンプライアンスを言うならば、判決を無視したこの様な態度について、まずその理由を説明する義務があるでしょう。最高裁判決によって勧誘方法を変えていれば、2次訴訟の原告のうち、一番最近に勧誘された人は被害者とならなかったことでしょう。

2 徳野指導の内容として、献金奨励・勧誘活動について次のことが指示されています。「教会員への献金の奨励・勧誘行為はあくまでも教会員本人の信仰に基づく自主性及び自由意思を尊重し」、「献金は、統一原理を学んだ者から、献金先が統一教会であることを明示して受け取る。」
 2次訴訟判決が違法とした献金は、2件を除いてすべて、統一協会員が「信仰」に基づいて「自主的、自発的」に行ったものです。その全てが「統一原理を学び」、それを真理として信じ、「献金先が統一協会であることを認識して」行ったものです。にもかかわらず、それらの献金が全て統一協会の違法な行為による損害として賠償の対象とされているのです。その理由は、「原告らは、自由な意思決定を阻害されて受け入れた信仰の影響下で、万物復帰や摂理の名の下、物品を購入することが求められていた」(判決 264頁)という記載で明らかです。この「物品」の部分は献金と読み替えてもそのまま妥当します。即ち、自由な意思決定を阻害されて受け入れた信仰の影響下で行われた献金は全て違法な行為による被害として損害賠償の対象になるのです。これは100円程度の月例献金や礼拝献金から、何億円もの摂理献金まで、全てについて適用される考えです。即ち、徳野指導の前後にかかわらず、正体を隠した勧誘によって統一協会員になってしまった人が、統一原理を信じたが故に献金をしているのであれば、過去のものであれ、現在のものであれ、未来のものであれ、その献金は全て違法行為による被害なのです。統一協会は損害賠償義務を負うのです。
 ですから、2次訴訟判決は「20〜30年前の出来事に対する判決」ではなく、統一協会の「過去・現在・未来」にかかわる判決なのです。

3 では、伝道に関してはどうでしょうか?伝道に関して徳野指導では、「協会員が自主的に運営するビデオ受講施設等における教育内容に統一原理を用いる場合、勧誘の当初からその旨明示するよう指導」せよと言っています。
 これは大きな嘘です。統一協会と法主体の異なる信徒会など存在しません。ビデオセンターは統一協会の伝道施設です。2次訴訟判決は、ビデオセンターから実践トレーニングまでの布教・教化課程は信徒会が運営しているものであるという統一協会の主張に対して、「宗教団体である被告(統一協会のこと)の組織とは別個独立に、連絡協議会又は信徒会という信徒団体が組織されていたとは到底認めることができず、被告が連絡協議会又は信徒会として主張する組織は被告の一部を構成するものであ」る(判決 272頁)と明確に述べています。
 従って、ビデオセンターへの勧誘については、統一協会の施設であり、統一協会に入信させることを目的としている布教活動ですと明示して勧誘しなければならないのです。徳野指導は統一協会が行っていることを架空の団体である信徒会が行っていることとして、それへの指導を教区長等に命ずるという形になっています。指導の内容も「教育内容に統一原理を用いる場合、勧誘の当初からその旨明示するよう指導して下さい。また、宗教との関連性や統一協会との関連性を聞かれた際には、ビデオ受講施設等の運営形態に応じた的確な説明ができるように」して下さいというにすぎません。統一協会の布教・教化活動を法令を遵守したものに変えることには全くなっていないのです。
 魚谷次長は、「CARPの学生が学内で勧誘する場合には初めからCARPという名称を名乗るように指導していると聞いています」と述べています。既に述べたようにCARP(原理研究会)は統一協会の学生支部に過ぎません。名乗るべきなのは、CARPという名称ではなく、統一協会であること、その布教活動であるという事実です。
 最低限以上の点が是正されない限り、統一協会の布教活動は国民の信仰の自由を侵害する行為なのです。でも、統一協会がこの点を是正することはないでしょう。是正したら、入る人が誰もいなくなってしまうからです。
 したがって、2次訴訟判決は、「20年〜30年前の出来事に対する判決」ではなく、伝道に関しても、統一協会の「過去・現在・未来」にかかわる判決なのです。


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