一審判決 263P17行目冒頭〜264P25行目末尾

3 近親者原告らの物品購入と相当因果関係
(1)近親者原告らのうち,原告■■■■,■■■■■,同■■■■,同■■■■■,同■■■■,同■■■■■,同■■■■,同■■■■,同■■■■,同■■■■,同■■■■■,■■■■,同■■■■,同■■■■,同■■■■,同■■■■及び同■■■■は,万物復帰のための経済活動として行っていた物販展に動員されるなどして,物品を購入したものである。
(2)原告らに物品を買い与えた場合(原告■■■■■,同■■■■,同■■■■■,同■■■■,同■■■■の近親者被害表の番号2,同■■■■の近親者被害表の番号2,同■■■■■の近親者被害表の番号1,同■■■■の番号2及び3,同■■■■,同■■■■,同■■■■の近親者被害表の番号1)については,物品購入費は,信者の不法行為によって近親者原告らに生じた損害と認められる。
原告らは,自由な意思決定を阻害されて受け入れた信仰の影響下で,万物復帰や摂理の名の下,物品を購入することが求められていたのであり,近親者原告らが原告らに物品を買い与えるために支出した代金相当額は,原告らの物品購入代金を肩代わりして支払ったものと評価することができるから,信者の不法行為と相当因果関係に立つ損害と認めることができる。
(3)これに対し,近親者原告らが,原告らの勧めに応じ,自分自身又は原告ら以外の第三者のために物品を購入した場合については,その出捐と信者の不法行為との間の相当因果関係を肯定することは困難である。
物品販売が組織的体系的に行われていたとはいえ,そこで販売されている物品は高額な物が多く,動員した顧客が必ず物品を購入するわけではないし,しつこく購入を迫られたことはあるにせよ,害悪を告知され不安を煽られるといった詐欺的恐喝的な方法によって物品を購入させられるわけではなく,統一協会の信仰壱持たない近親者原告らが,罪の清算や万物復帰の実践のため購入を余儀なくされる心理状態に陥るということもないはずであるから,購入には,統一協会の信仰を持っていない近親者原告らによる自由な意思決定が介在するといわざるをえない。確かに,信者による原告らに対する不法行為がなければ,近親者原告らが統一協会の物販活動に接することもなかったであろうし,近親者原告らに対する購入勧誘は,宗教的実践の一環であるのにそのことを隠して行われてたことも事実であり,物品購入が不本意なものであったことは理解できるが,近親者原告ら自身の自由な意思決定に基づく物品購入費の拠出まで,信者の原告らに対する不法行為と相当因果関係に立つ損害と認めるのは,やや無理があるのではないかと思われる。


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